2019年03月18日

文豪は慧眼なり

以下は、有名な小説の興し部分です。

智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。

意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。

住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。

人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。

やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。

あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、
束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。

ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降る。

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故ゆえに尊(たっと)い。

〜夏目漱石『草枕』より〜


いやはや、深く。鋭い…(๑˃̵ᴗ˂̵)

posted by 久野晋作 at 12:00| 千葉 ☀| 徒然こらむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする