以下、昨日の記者会見において申請人の代理人として手弁当で調停手続きを引き受けてくださった「手賀沼放射性廃棄物対策弁護団」が取りまとめていただいた、千葉県(鈴木栄治知事)および公害等調整委員会宛の抗議声明文です。
今晩、布佐にて調停申請人の会合が急遽組まれ、年明けの訴訟手続について話し合いを行います。
抗 議 声 明
公害等調整委員会 御中
千葉県知事 鈴 木 栄 治 殿
1.調停不成立
千葉県が、松戸市、柏市、流山市から搬入された、1キログラム当たり8000ベクレルを超える放射性廃棄物を含む焼却灰(以下、「本件焼却灰」という。)を「手賀沼終末処理場」(我孫子市、印西市)内に設置した「一時保管施設」(以下、「本件施設」という。)に保管している問題について、我孫子市・柏市・印西市在住の住民ら46人が申請人となって、国の公害等調整委員会に対し、本件施設の安全性が確保されるまでの搬入停止を求めていた調停につき、本日、同委員会は、調停成立の見込みがないとして、調停の不成立の決定をした。
2.本件施設の危険性
手賀沼終末処理場は、利根川と手賀川に挟まれた低湿地帯(元沼地)にあり、そもそもその地盤は軟弱である。我孫子市洪水避難地図(あびこ洪水ハザードマップ)によれば、本件施設の建設地について、浸水した場合に想定される水深は「5.0m以上」とされている。また、我孫子市作成の「地盤の揺れやすさマップ」では、「日本のどこでも起こりうる直下型地震として、我孫子市直下でマグニチュード6.9規模の地震が発生した場合」「震度6強」が予想され、「大きな地割れが生じたり、大規模な地すべり」などが起こると想定している。実際、平成23年3月11日に発生した東北地方大平洋沖地震(東日本大震災)では、千葉県我孫子市布佐地域などにおいて、液状化などの甚大な被害が発生した。さらに、我孫子市を含む千葉県北部では、ピンポン玉大の雹による大規模な被害も経験し、竜巻など突風の被害も散発している。
本件施設は簡易なテント構造であり、本件調停を通じて明らかになったことであるが、千葉県は、強風に関し本件施設のテントの膜面が破れることを前提として本件施設を設計している。強風時にテント膜面が破損した場合、放射性廃棄物が拡散するおそれは高い。
千葉県は、排水設備は万全と強弁するが、本件施設に設けられた側溝には、防水性のない「防草シート」が張られたのみである。本件施設に排水処理施設はなく、雨水はそのまま河川に放水される。本件施設が浸水した場合、大量の放射性物質が手賀川及び利根川に流出するおそれがある。そうなれば、地元地域のみならず、下流の千葉県及び茨城県も放射性物質により広範囲に汚染される。利根川は水道水源であり、下流域の住民にも健康被害が広がる。利根川が流れ込む大平洋も汚染され、健康被害、環境破壊及び漁業被害などの経済被害も生じる。
3.千葉県はもはや「行政失格」である
千葉県は、昨年12月21日から本件焼却灰の強行搬入を開始した。これを住民らが阻止しようとして、現場は大混乱となった。
住民らが反対するのは、本件施設が危険だからである。
しかも、千葉県の住民無視の態度がさらに問題を深刻化している。「住民説明会」では住民の合意を得る努力を怠り、住民からの質問にすら充分に答えなかった。その態度は調停中も何ら変わることなく、千葉県は合理的な理由も説明せずに本件施設の安全性を唱え続けるだけであった。
住民からの真摯な改善要望、ぎりぎりの妥協案すら一顧だにしない千葉県の高圧的かつ住民無視の姿勢は、行政庁として失格の烙印を押すほかない。住民の生命や安全・安心に関わる重大事項については住民合意に基づいて決定することが民主主義プロセスである。それを千葉県はまったく理解していない。近く、千葉県内でも放射性廃棄物(指定廃棄物)の最終処分場候補地の選定が始まるはずであるが、このような「行政失格」の千葉県が候補地住民の反発を買うことは必至であり、千葉県が最終処分場を決めることは極めて困難である。その場合、最終処分場が確保できないのであるから、本件「一時保管」施設に搬入された本件焼却灰がほんとうに約束期限の平成27年3月末までに搬出され、原状回復されるのか、甚だ不透明である。そのことに住民らはいっそうの不安をかき立てられているいる。
以上、地方自治、住民意思を踏みにじる、「行政失格」 の千葉県に対し、本書をもって厳重に抗議する。
4.公害等調整委員会は国民の信頼を失っている
公害等調整委員会は、本件調停において、ただ当事者双方の言い分を聞くだけで、あるべき解決に向けて協議を主導する姿勢に欠けていた。同委員会には、当初から双方の言い分を「足して二で割る」ような解決しか念頭にないようであった。
このような公害等調整委員会では、公害紛争処理法の規定する「迅速かつ適正な解決を図る」という法の目的を果たすことなど到底できない。このような調停は、同委員会がその存在意義を自ら葬り去るに等しい。このような調停しかできないようであれば、同委員会が、公害・環境破壊などに苦しむ国民の信頼を失うことは必定である。そして、同委員会の手続きを積極的に活用しようとする動機付けを失わせ、ただでさえ減少している同委員会への申立てをさらに激減させ、ひいては公害紛争処理法に基づく制度の存続基盤自体を根底から揺るがさずにはおかないであろう。
以上、国民の負託に応えられない公害等調整委員会に対し、本書をもって厳重に抗議する。
2013年12月19日
申請人団
手賀沼放射性廃棄物対策弁護団 団長 弁護士 中 丸 素 明
(事務局長 弁護士 及 川 智 志 )
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